腱板断裂の基礎知識
Thera-hubスタッフ 金澤整形外科の平峯です!
今回は【腱板断裂】についてです!!
腱板断裂について、知っておきたい基礎知識を中心に
お伝えしていこうと思います。
〇断裂の種類
外傷性断裂:転倒や、交通事故など外傷が起因となる
変性断裂:加齢などの退行性変化に起因するもの
腱板断裂はこの2種類に分けることができます。
また、断裂の約8割が変性断裂であることもわかっています。
変性断裂の原因も以下のように、内因性と外因性に分けられます。
〇変性断裂の原因
内因性:血流低下、弾性低下、喫煙など
外因性:肩峰下インピンジメント、大きなcritical shoulder angle、オーバーユースなど
ちなみに、critical shoulder angle(CSA)とは・・・・
X-pでの所見で、関節窩の上辺と下辺を結んだ線と、肩峰外側縁のなす角度のことです。
近年の報告では、CSAが35°を越えると肩峰下と腱板との接触応力が大きくなることが
明らかになっており、35°以上のCSAは変性断裂の発症リスクと高い相関を認める
報告もあります。
〇断裂タイプ
完全断裂:全層(5層)すべてが断裂している
部分(不全)断裂:5層の内、部分的に断裂がみられる
の2種類があります。また、部分断裂は・・・
①滑液包面断裂
➁関節面断裂
➂腱内水平断裂
の3つに分かれます。
〇断裂サイズ
1cm以下:小断裂
1~2cm:中断裂
2~4cm:大断裂
4cm:広範囲断裂
というように、断裂部のサイズによる区分けもされます
他にも、一般的なのがPatte分類といって、棘上筋断裂の内側への引き込み具合を
指標にした分類も存在します。
ステージ1:棘上筋断裂端が大結節付近に溜まった状態
ステージ2:断端が上腕骨の頂点まで引き込まれている状態
ステージ3:断端が関節窩レベルまで引き込まれている状態
以下に示しているのが、腱板断裂の種類と数で分類した
Collinらの分類です
タイプA:棘上筋+上部肩甲下筋
タイプB:棘上筋+全肩甲下筋
タイプC:棘上筋+上部肩甲下筋+棘下筋
タイプD:棘上筋+棘下筋
タイプE:棘上筋+棘下筋+小円筋
この辺りの分類の知識を押さえておけばとりあえずは立ち向かえるかと思います笑
今後は、機能的や解剖学的なところもお伝えしていきたいと思います
以上、今日はここまでです!
烏口上腕靭帯(CHL)と周囲組織について
Thera-hubスタッフ 金澤整形外科の平峯です!
今回は、烏口上腕靭帯(CHL)と周辺組織についてです!
その前に、拘縮肩に対するマニュピレーション後の鏡視下所見に
関する報告をご紹介します。
男女15例の拘縮肩にマニュピレーション施工後に、
断裂・出血部位を診たところ
①腱板疎部(rotator interval)の断裂・出血:14/15例
→前上方組織の関与
②骨頭下面の剥離・出血:13/15例
→下関節上腕靭帯(IGHL)の関与
➂肩峰下滑液包の剥離・出血:なし
→滑液包の中は拘縮に関与しない
全周性に硬さのある拘縮肩の可動域制限に関与するのは
前上方組織である腱板疎部と下関節上腕靭帯だったということが
この報告からわかります。
では、この前上方組織である腱板疎部には何が存在するかというと
烏口上腕靭帯(CHL)ですね
CHLは、烏口突起の底部から上腕骨大結節及び小結節に向けて
扇状に走行し、腱板疎部を補強しています
図で見てもらうと少しイメージしやすいかと思いますが、
このように、棘上筋腱(SSP)と肩甲下筋腱(SSC)の間に存在します
また、水平面から見た模式図での位置関係は
棘上筋腱・肩甲下筋腱・上腕二頭筋長頭腱・肩甲下筋腱を
包み込んでいるようになっています。
CHLとの関係で重要になってくるのが、先ほどもでてきた
棘上筋腱と肩甲下筋腱のところです。
1stの肢位で、外旋する場合は肩甲下筋腱が外側へ引き出され
結滞動作では、伸展・内転・内旋の複合運動ですので
特に内転時、棘上筋腱が外側へと引き出される必要があります。
ここで、CHL~棘上筋腱、CHL~肩甲下筋腱の癒着が
あると各筋腱が引き出されるときに、CHLが干渉してしまい
1st外旋と結滞動作の可動域制限へとつながってしまいます。
ここでは、CHLと棘上筋腱、CHLと肩甲下筋腱が干渉せずに
バラバラに動くことが必要となってきます。
今回は、ここまでとしましょう!!
この辺りは次回も含め、もう少し深掘りしていきたいと思います!
肩甲上神経と棘下筋の動態について
Thera-hubスタッフ 金澤整形外科の平峯です!
今回は、肩甲上神経繋がりで棘下筋の動態についてです。
まだ、肩かよ!!って思う方もいるかもしれませんが・・・笑
肩って解剖学的なイメージがしにくくて、操作も難しくて
なんか嫌ですよね??そんなことないですか??笑
でも、できなかったことができるようになるとか
知らなかったことを知った時ってやっぱ楽しいですよね笑
このサロンに入っている方もそんな方ばかりだろうなと
勝手に思ってます笑
さて、本題ですが!!
前回までの記事で、肩甲上神経は肩甲切痕と棘下切痕を通過することを
書いてきたかと思います。
ここで重要になってくるのが、肩甲切痕のところでは棘上筋
棘下切痕のところでは棘下筋ですが、今回は棘下筋についてです!
棘下筋の深部には肩甲上神経はもちろんのこと、肩甲上動脈も通り
その周囲には脂肪組織も存在します。
この脂肪組織が棘下筋下脂肪体といい、棘下筋の収縮時には重要になります。
肩関節外旋運動時に伴い、棘下筋は内側に移動しますが、
その際、棘下筋の深部に存在する脂肪組織も棘下筋に
引き寄せされるように内側へと移動し、脂肪組織の幅が広がります。
(イメージは棘下筋の収縮に伴い、脂肪組織がバキュームで吸い取られるような
感じです)
また、内旋運動時の脂肪組織は棘下筋の筋腹に押さえつけられ
外側へと移動し、幅が狭くなって薄く広がっていきます。
そのことにより外側へ移動した際は、関節唇や関節包との隙間に入り込み
組織間の摩擦を軽減する働きをしています。
また、棘下筋の筋腹の付着部は赤で示したところだけになります
肩甲頚・棘下切痕周囲は棘下筋の筋腹は付着していないため
ここでの脂肪組織は棘下筋と肩甲骨との滑走性を維持する機能が求められます。
そのためには、棘下筋下脂肪体が柔軟に滑走し、機能的に変形できることが
重要になります
赤→筋腹部分:筋緊張の緩和
青→筋腱部分:滑走性
が大事ということです!
以上、今回はここまでです!!
肩甲上神経障害
Thera-hubスタッフ 金澤整形外科の平峯です!
前回の記事では、肩甲上神経は肩甲切痕部と棘下切痕部での
絞扼が起こると、ご紹介しましたが、
今回は、どのようにして肩甲上神経が障害されるのかを書いていきます。
肩甲切痕部では上肩甲横靭帯によって、棘下切痕部では下肩甲横靭帯によって
肩甲上神経は固定されるように張っており、肩甲骨運動の際に
強い圧迫や摩擦ストレス、牽引ストレスが掛かります。
神経はこのような機械的ストレスに弱いため、神経症状が出やすい
ことが想像できるかと思います。
肩甲上神経は肩甲切痕、棘下切痕部を通過するため、肩甲上神経を
診る上での、ポイントは肩甲骨のアライメントになります。
では、どのような肩甲骨アライメントになると
症状が出やすくなるのかというと・・・
肩甲骨の前傾・下方回旋・外転位です。
まず、前傾・下方回旋位になると
関節窩が下方に下がり、肩峰が前方かつ下方へと向きます。
そのため、肩甲切痕部と頸椎との2点間距離が遠くなり
肩甲上神経は、持続的に牽引ストレスが掛かった状態になり
肩甲切痕部では、上肩甲横靭帯が張っているため、靭帯との間で
絞扼されることになります。
また、外転位においても棘下切痕部と頸椎との2点間距離が遠くなるため
肩甲上神経は牽引ストレスが掛かることになります。
このようにして、肩甲上神経障害が起こってきます。
もちろん、肩甲骨アライメントだけではなく、
棘上筋や棘下筋など、周辺組織の機能や柔軟性も関係してきますので
そのあたりも必要になってきます。
以上、今回は肩甲上神経と肩甲骨アライメントの関係でした
肩関節後方組織Part2
Thera-hubスタッフ 金澤整形外科の平峯です!
引き続き、肩関節後方組織で
前回は、QLS(腋窩神経)障害についてでしたが、
今回は、肩甲上神経障害についてです!!
まずは、肩甲上神経の走行から押さえていきましょう
腕神経叢から分岐した肩甲上神経は、後外側下方に走行し肩甲骨の肩甲切痕
に向かいます。上肩甲横靭帯をくぐり棘上窩に達し、棘上筋枝を分岐しつつ
外側に走行、棘下切痕で内側に向きを変え、棘下窩に達し棘下筋に分岐します。
一般的に多いのが、肩甲切痕部での上肩甲横靭帯との絞扼障害によるものです
肩甲切痕部で絞扼障害が起こると、棘上筋と棘下筋に筋力低下や筋委縮がみられ
棘下切痕部で絞扼障害が起こると、棘下筋のみに筋力低下や筋委縮が
みられるようになります。
ですので、肩甲切痕部での絞扼障害がある場合
棘上筋・棘下筋は効かなくなるため、三角筋のみで上げるように
腱板断裂症例と同じ上げ方になります。
ここは、間違えないようにしないといけないですね。。。汗
そのためには、肩甲上神経がどうすれば障害されるのかを
知っておかなければいけませんね。
次回は、肩甲上神経の走行を踏まえてもっと深掘りしていこうと
思います。
少し短いですが、今回はここまでとしましょう!!
肩関節後方組織
Thera-hubスタッフ 金澤整形外科の平峯です!
今回は肩関節後方組織についてです!!
後方組織で問題となる部分はいくつかありますが、
今回は障害部位として特に多い、
QLS(Quadrilatelal space)日本語では、四辺形間隙などとも言われています。
上腕骨外科頸・上腕三頭筋長頭・大円筋・小円筋
によって作られる間隙のことで
ここには、腋窩神経・後上腕回旋動静脈が通過します。
このQLS部分に硬さがあると、容易に腋窩神経が絞扼され
腋窩神経症状がある場合、肩関節挙上時に上腕外側辺りに症状を訴え
痛みを訴える場合や「重だるいです」と訴える場合があります。
また、小円筋や三角筋の筋力低下、上腕外側部での知覚障害を伴うこともあります。
このように、腋窩神経は上腕骨の後方を回り前外側面までの感覚領域を持ちます
では次に、この腋窩神経の解剖について簡単ではありますが紹介していきます。
上腕外側へと進む後枝これはまた、小円筋と上外側上腕皮神経に分かれます
三角筋へと分岐する前枝、肩峰下滑液包への枝、結節間溝への枝、下部関節包への枝
- 後枝(小円筋・上外側上腕皮神経)
- 前枝(三角筋)
- 肩峰下滑液包への枝
- 結節間溝への枝
- 下部関節包への枝
というように、分岐していきます。
また、上外側上腕皮神経は三角筋の後方下部から表層にできてきますが
この部分では硬い筋膜(密性結合組織)を貫いてでてくるため
ここでの圧痛を確認することも大事になってきます。
以上、今回はここまで
上腕二頭筋長頭腱(LHB)評価について
Thera-hubスタッフ 金澤整形外科の平峯です!
今回は、上腕二頭筋長頭腱(LHB)の評価方法についてお伝えします
と言いましたが、その前に簡単にLHBの問題について簡単にまとめていきます。
LHBは、結節間溝を通過し肩関節内へと侵入していきます。
そこから、肩甲骨の関節上結節と上方の関節唇に付着していきます。
LHBは、腱鞘に包まれることによって腱滑走による摩擦ストレスが軽減され
また、結節間溝部では大結節、小結節をまたぐように横靭帯によって
蓋がしてあるような形態をしています。
ということは、この狭いトンネルを通るLHBは機械的ストレスが増加し
同部での炎症が生じやすいことがわかります。
このトンネル部分でのLHBにストレスをかけて行うのが
皆さんも知っている、speed testになります。
Speed testでは、収縮した際にLHBのを横靭帯に当てることで、
疼痛を誘発するtestになりますので、しっかりと肩中間位・前腕回外位で
結節間溝を上に向けて、行うことがポイントになります。
絵で書くとこんな感じです(汚くてごめんなさい。。。)
結節間溝部を水平面からみた図ですが、
上腕二頭筋が収縮すると、LHBは浮き上がり横靭帯へと当たることになります
続いては、ヤーガソンtestです。
これは上腕二頭筋が持っているいる、回外作用を利用し上腕二頭筋を収縮させ、
その張力が刺激となって疼痛を誘発するtestになります。
基本的には、肘90°位で回内位から、抵抗に対して回外運動をすることで
疼痛を誘発できますが、この時も肩関節肢位に注意して行うことでより、
疼痛誘発をしやすくなります。
中間位での、結節間溝でのLHBの合力をみてみると、
LHBは結節間溝に向かって押し付けられる力が作用します
そのため、ヤーガソンtestではこの合力(押し付ける力)が疼痛を
誘発しているということです。
また、過伸展位にすると結節間溝部が前方に回転するため
そのことにより、LHBの走行は結節間溝を頂点とし大きく折れ曲がり
鋭角化することになります。
下垂位よりも大きな合力ができ、機械的ストレスを増加させる
ことができます。
明らかに、LHBに圧痛があるのにヤーガソンtestは引っ掛からないな・・・
などというときに、このようにLHBの走行を変化させて行ってみて下さい!!
以上、今回はここまでです!!